台風や地震のあとに困るのは、スマホ本体が壊れることだけではない

停電でテレビが消え、携帯回線が混み、防災アプリもSNSも開きにくくなる
その時に初めて、スマホだけでは情報の入口がひとつに偏っていたと気づく

防災ラジオの必要性は、最新機能の多さではなく、通信回線に頼らずAM/FMの電波で災害情報を受け取れる点にある

スマホは安否確認、地図、ライト、連絡に使いたい
だからこそ、災害直後の大まかな情報確認までスマホに全部任せないほうがいい

防災ラジオの必要性はスマホが壊れる時ではなく通信が止まる時に出る

「スマホがあるから防災ラジオはいらない」と考えやすいのは、普段の生活ではスマホのほうが圧倒的に便利だからだ

ニュースも天気も自治体の通知もSNSも、全部スマホで見られる
モバイルバッテリーを持っていれば、電池切れもある程度は防げる

ただ、災害時に問題になるのはスマホの充電だけではない

通信回線が混む、基地局が止まる、停電でWi-Fiが落ちる、情報の真偽確認に時間を取られる
このあたりが重なると、スマホは手元にあるのに情報が入らない状態になる

2019年の台風15号の停電体験では、テレビが使えず、携帯通信も不安定になり、防災速報アプリの避難所や給水所の情報も受け取れなかったという記録がある

スマホは残っている
でもネットにつながらない

防災無線も聞き取りづらく、自宅の通信環境が戻るまで数時間、状況が分からない
その間、情報収集も発信もできず、スマホのライトすら電池を気にして使いにくい

この場面で必要になるのは、スマホの代わりではない
スマホとは別の情報ルート

防災ラジオは、通信障害の時にスマホを助ける道具として考えるほうが現実的になる

スマホが災害で困る場面はバッテリー切れだけではない

災害時のスマホ対策というと、まずモバイルバッテリーを考える人が多い

もちろん充電は大事
ただ、スマホの電池が80%残っていても、回線が使えなければ情報は取りにくい

停電でテレビが見られない

停電すると、まずテレビが消える

普段ならリビングでニュースをつければ済む話も、停電中はスマホかラジオに頼ることになる
夜なら部屋の照明も落ち、画面を見るたびにスマホの電池が減っていく

台風の夜、暗い部屋でスマホを何度も開き、圏外や読み込み中のまま止まる
それだけで、残量表示がいつもより気になる

停電時は、テレビを失った分までスマホに負担が寄る

この負担を少し逃がすのが、電池式のラジオや乾電池で動く小型ラジオになる

防災アプリが届かない

自治体の防災アプリや速報アプリを入れていても、通信が不安定なら通知を受け取れないことがある

アプリそのものが悪いわけではない
問題は、アプリの情報も通信回線を通って届くという点

避難所、給水所、停電復旧、交通情報
本当に見たい情報ほど、災害直後はアクセスが集中しやすい

「アプリを入れてあるから大丈夫」ではなく、アプリが開けない時にどうするかまで考えておきたい

スマホのバッテリーを情報確認で消耗する

災害時のスマホは、情報収集だけに使うものではない

家族への連絡
安否確認
ライト
地図
決済
避難先の確認

やることが増えるほど、画面を開く回数も増える

SNSで情報を探し、自治体サイトを開き、地図を確認し、家族へ連絡する
この流れを何度も繰り返すと、バッテリーは想像以上に減りやすい

ラジオで大まかな状況を流し聞きできれば、スマホを開く回数を減らしやすい

スマホの電池を守るという意味でも、防災ラジオには役割がある

スマホの充電やモバイルバッテリーの容量は、別で考えるべきテーマになる
「災害時のスマホ充電・モバイルバッテリー」を見直す時は、情報収集用の道具と充電用の道具を分けて考えるほうが失敗しにくい

災害時にスマホが使えない時は車の充電も頼り切れない

北海道胆振東部地震のあと、停電でテレビが使えず、スマホもつながりにくくなった体験がある

車の充電器があればスマホは充電できる
ただし、災害時はガソリンの補給も不安になる

エンジンをかければ充電できるとしても、停電がどのくらい続くか分からない
ガソリンスタンドが動くかも分からない

その状況で、情報確認のたびに車へ行くのは現実的とは言いにくい

小さなラジオがあれば、室内でニュースを聞きながら、スマホは必要な連絡用に残せる
ここで重要なのは、ラジオが万能という話ではない

スマホ、車、ラジオの役割を分けること

車は充電手段
スマホは連絡と詳細確認
ラジオは通信に頼らない大枠確認

この分け方があるだけで、停電中の不安は少し減らしやすい

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災害SNSのデマは速さより真偽確認で消耗する

災害時のSNSは役に立つ

現地の道路状況、停電範囲、避難所の様子、物資情報
テレビや公式発表より早く見える情報もある

ただ、速い情報ほど、真偽確認が必要になる

北海道の停電時には、職場でも「知り合いの消防士が言っていた」「自衛隊関係者から聞いた」「電力会社の人が言っていた」という又聞きの情報が回ってきたという体験がある

書いている人に悪意があるとは限らない
むしろ、心配して広めていることも多い

でも、出どころが曖昧な情報は、読む側の判断を迷わせる

SNSの拡散希望で迷う時

「拡散希望」と書かれた投稿を見ると、助けになるなら広めたくなる

しかし、災害時は古い情報、場所が違う情報、確認されていない救助要請が混ざることもある
能登半島地震でも、SNSは避難所や物資情報の共有に使われた一方、虚偽の救助要請や善意の拡散が問題になった

SNSを使わないほうがいい、という話ではない

SNSは細かい声を拾う道具、ラジオは大枠を確認する道具
そう分けておくと、スマホで未確認情報を追い続ける時間を減らせる

不安な時ほど、タイムラインを何度も更新したくなる
そのたびに電池も判断力も削られる

ラジオで全体の状況を聞き、スマホでは公式情報や家族連絡を優先する
この順番のほうが、災害時は落ち着いて動きやすい

防災ラジオは地域情報に弱いが災害直後の大枠確認に強い

防災ラジオがあれば何でも分かる、とは考えないほうがいい

ラジオは、細かい町内ごとの被害、近所の道路の通行可否、個別の避難所の混雑までは拾いにくい
地域によっては、ほしい情報がすぐ流れないこともある

それでも災害直後は、まず大枠が必要になる

どの地域で地震が起きたのか
津波や大雨の注意があるのか
停電や交通に影響が出ているのか
自治体や気象情報はどうなっているのか

この大枠をスマホの通信に頼らず取れるのが、AM/FMラジオの強み

東日本大震災時の情報手段では、震災発生時にAMラジオを使った割合が60.1%と示された資料もある
停電でテレビやインターネットを失った時、ラジオが情報源として使われたことが分かる

防災ラジオは地域の細部を全部埋める道具ではなく、最初の不安定な時間に情報の土台を作る道具

この位置づけで見ると、スマホと競合しない

防災無線が聞こえない時に携帯ラジオが助かる場面

自治体の防災無線がある地域でも、必ず聞き取れるとは限らない

2011年3月11日の体験では、地震のあと歩いて帰る途中、防災無線は流れていたが、内容までは聞き取りづらかったという記録がある
一方で、2日前に買った乾電池式のポケットラジオからは、アナウンサーの声が明瞭に聞こえた

外を歩いている時は、車の音、風、雨、建物の反響がある
集合住宅の室内では、窓を閉めていると外の放送がこもりやすい
戸建てでも、防災無線のスピーカーが遠いと内容までは分からないことがある

「何か放送している」のは分かる
でも、肝心の内容が分からない

この状態は意外と困る

防災無線は聞こえる前提ではなく、聞こえなかった時の補助を用意する

ポケットラジオや小型ラジオは、在宅避難だけでなく、帰宅中や車から離れた場所でも使いやすい
寝室や玄関近くに置いておくと、暗い中でも手に取りやすい

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防災ラジオの必要性を感じやすい家庭と環境

防災ラジオが必要かどうかは、住んでいる場所や家族構成でも変わる

ただ、「都市部だから不要」「地方だから必要」と単純には分けにくい
見るべきなのは、災害時に情報の入口がいくつ残るか

集合住宅で外の放送が聞こえにくい

マンションやアパートでは、窓を閉めると防災無線や外の声が入りにくい

夜の停電中に、外で何か放送されている気配だけがある
でも内容が分からない

この場合、スマホで確認できればよいが、回線が混んでいると画面が進まない
ラジオがあると、少なくとも広域の災害情報を室内で確認しやすい

郊外や山間部で通信が不安定になりやすい

郊外や山間部では、停電や基地局の影響で通信が不安定になると、スマホの情報取得が一気に弱くなることがある

携帯圏内まで移動すればつながる場合でも、災害直後に移動するのは負担が大きい
道路状況が分からない時は、むやみに動かないほうがよい場面もある

通信が弱くなった時に、家の中で情報を取れる手段があるか
ここを先に見る

家族が別々の場所にいる時間が長い

平日の昼間は、家族が学校、職場、外出先に分かれていることが多い

災害が起きると、スマホは連絡に使いたくなる
その時にニュース確認までスマホで続けると、電池の使い道が分散する

家にいる人がラジオで大枠を聞き、スマホは安否確認に使う
この役割分けができるだけでも、家庭内の動きが整理しやすい

防災ラジオは買っただけで安心せず置き場所と電池を見る

防災ラジオは、買っただけでは役に立ちにくい

停電した夜に箱のまま押し入れに入っていた
電池が入っていなかった
周波数を合わせたことがない
家の中でどの部屋なら聞こえるか知らなかった

この状態だと、いざという時に探すところから始まる

最初に見るのは、機能の多さよりも次の3つで十分

  • すぐ手に取れる場所にあるか
  • 乾電池や充電状態を確認しているか
  • 自宅でAM/FMが受信できるか

防災袋に入れるなら、ラジオ本体と予備電池を一緒に置く
スマホ、ラジオ、乾電池を並べてみると、何が足りないか分かりやすい

寝室に置くなら、暗い中でも手が届く場所
玄関に置くなら、避難時に持ち出しやすい場所

置き場所は「しまう場所」ではなく、停電した時に触れる場所で考える

月1回でなくても、防災袋を見直すタイミングに一度、ラジオの電源を入れる
家の中で受信しやすい場所と周波数をメモしておく

この小さな確認が、買っただけの防災用品との違いになる

手回し充電ラジオの性能評価に寄せすぎない

防災ラジオを調べると、手回し充電、ソーラー充電、ライト付き、スマホ充電対応など、機能の話に流れやすい

ただし、この記事で見るべき中心はそこではない

手回し充電やソーラー充電は、あると助かる場面もある
一方で、嵐の中ではソーラー充電どころではない、手回しでスマホを十分に充電するのは大変、という体験もある

だから、防災ラジオをスマホ充電器の代わりとして期待しすぎないほうがよい

まずは情報を受け取る道具として考える

手回しやソーラーの詳しい違い、機種ごとの選び方は「防災ラジオの選び方」や「手回し充電ラジオの注意点」で分けて考えるほうが分かりやすい

今回の中心は、通信障害やデマでスマホの情報取得が崩れた時に、ラジオという別ルートを残すこと

スマホと防災ラジオはどちらか一方ではなく役割を分ける

スマホは災害時にも必要
むしろ、なくては困る場面が多い

だからこそ、スマホに全部を背負わせない

ラジオで災害の大枠を聞く
スマホで家族へ連絡する
自治体情報や地図は、通信が安定している時に確認する
SNSは細かい現地情報を見る時だけ使い、未確認情報はすぐ拡散しない

この順番にすると、スマホの電池も判断力も残しやすい

停電時の情報収集は、ラジオ、スマホ、防災無線、近所の掲示や自治体情報を組み合わせる話になる
より広く整理するなら「停電時の情報収集まとめ」として分けておくと、この記事の役割もぶれにくい

防災ラジオはスマホの代わりではなく、スマホを最後まで使うための補助線

この見方に変えると、「いる・いらない」の判断もしやすくなる

まとめ:防災ラジオはスマホ依存の盲点を埋める別ルートになる

防災ラジオの必要性は、スマホを否定する話ではない

スマホは便利で、災害時にも必要
ただ、停電でテレビが消え、通信障害でアプリやSNSが不安定になり、真偽不明の情報確認で電池と判断力を使う時、スマホだけでは負担が大きくなる

その時に、AM/FMラジオで大枠の災害情報を受け取れると、スマホを連絡や詳細確認に残しやすい

まずやることは難しくない

家にラジオがあるなら、電池を入れて受信できる場所を確認する
防災袋に入れるなら、予備電池と一緒に置く
寝室や玄関に置くなら、暗い中でも手に取れるかを見る

災害時の情報は、ひとつに絞るほど崩れやすい

スマホだけに頼らず、通信に頼らない情報の入口をひとつ増やす
防災ラジオは、そのための現実的な備えとして見直しておくと安心だ

監修:佐藤進
保有資格:家電製品アドバイザ、防災士